2010年2月6日土曜日

西垣通 (2010) 『ネットとリアルのあいだ』ちくまプリマー新書

この本の問いは

21世紀情報社会のあるべき未来を考えていくとき、いちばん大切なことは何だろうか。(116ページ)


で、その答えは

それはネットをつかう「人間」の原型的なすがたを直視することだ。その実相を見誤ると、IT革命はとんでもない方向に暴走していくことになる。(116ページ)


です。

しかし第一章「ITが私を壊す」の冒頭は、正直いって凡庸で、ブログでも読める程度の文章のようにも思えてきます(プリマー新書だからでしょうか)。

ですが途中でジュリアン・ジェインズ (Julian Jaynes) の論が導入されるあたりから、いつもの西垣先生らしさが出始め、第二章「生きることは創りだすこと」では「フレーム問題」「クオリア」「サイバネティックス」「オートポイエーシス」などが新書に相応しくやさしく解説されます。そして第三章「未来のネット」の最後では

身体性とコミュニティの回復が、情報社会の未来をひらくのである。(157ページ)


と結論が出されます。


この結論も、上の引用だけで読むと凡庸に見えますが、第二章で提示・解説された問題群を通して考えると非常に豊かで深い主張であることが痛感されます。参考文献に提示された本はやはり読んでいなければならないと思わされるでしょう。

私がルーマンを約10年ぶりに読んだのは実は西垣先生の著作がきっかけでした。今回はこの本で、ジュリアン・ジェインズ (Julian Jaynes)の『神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡』をやはり読もうと決意しました。アントニオ・ダマシオ (Antonio Damasio) の著作もやはり読んでおかねばと思います。

ジャンルを問わず、目の前の現実をきちんと考えてゆこうとする人にはお薦めです。


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