2010年4月23日金曜日

自動機械翻訳の実用化、言語コミュニケーション教育の新しいデザイン


■ 「企業が学生を選ぶポイント」:「コミュニケーション力81%」「語学力0%」

毎日新聞2010年3月22日の記事は、日本の主要100社を対象に、複数回答で「企業が学生を選ぶポイント」に答えてもらった結果を報道しています。このブログに掲載したグラフはその結果を私なりにまとめてみたものです。

それによるとトップが「コミュニケーション力」で81%、2位が「行動力」で72%で、以下を大きく引き離しています。

逆に設問にはあるのに回答が少なかったのが、「専門的知識」の2%、「忍耐力」の1%。どの会社もポイントにしていない、つまり0%の回答だったのが「課外・学外活動などの経験」と「語学力」でした。





■ 定型的な「英会話」ならもうiPhoneでできる

企業の方々が「コミュニケーション力」や「語学力」という言葉でどういったことを意味しているのかは非常に興味深いところですが、私としてはもし「語学力」という言葉で、「英会話」といった浅いレベルの、定型句だけでの典型的応答を意味しているのなら、確かにそれはもはや重要なことではないと思っています。

決まり文句だけを使って、概念的には自明な枠組みの中で、細部の情報だけを外国語で伝えるぐらいなら、どうやら現状でもiPhoneなどでもある程度達成可能なようです。





ちょっとググッてみたら、このサービスは既に商品化されていて、このアプリのレビューも公開されていました。




アプリを開発しているのは、Jibbigoという会社です。

現在、Chinese-EnglishとSpanish-Englishでしたらそれぞれ24.99ドル、Japanese-Englishでしたら27.99ドルです。

限られた意味での「英会話力」でしたら3000円程度でiPhoneで実現できるようになったと言えるでしょう。(追記:先程iTunes Storeで購入したらJibbigo Japanese English Speech Translatorは3200円でした。使ってみた感想はまた報告します)



■ GoogleのChromeでの自動翻訳

テキストベースでしたら、現在、GoogleのブラウザであるChromeが自動翻訳のサービスを提供しています。私はとりあえず、ドイツ語ウィキペディアのNiklas Luhmannのページを英訳してみましたが、取り敢えずの理解をするには十分に実用的です。



これで、ブラウザに情報が取り込めるなら、ドイツ語などでも概要がつかめます。詳細を正確に知りたければその箇所だけを自分で翻訳すればいいかとも思えます。もちろん厳密に学術的であるためにはすべてを人間の手で翻訳するべきでしょうが、実用的にはこの自動機械翻訳を駆使することで、従来よりもずいぶん楽に大量の仕事ができるようになるでしょう。


追記
Google translateも、昔と違って、同時翻訳だし、多言語対応だからすごいですね。




■ 飛行機は鳥の真似を止め、人工知能は人間の真似を止めた

自動機械翻訳は1950年代ぐらいから始まり、最近まではその誤訳ぶりは物笑いの種でしたが、大量データ処理、高速計算、安定した通信環境などで自動機械翻訳は一気に実用化されようとしているのかもしれません。

かつて飛行機は鳥の真似をして羽ばたく設計で作られようとしたとも聞きます。飛行機が実用化されたのは、飛行機が鳥の真似を止めて翼を固定化し、鳥にはないエンジンを搭載したからです。

人工知能もチェスなどにおいて当初は人間の思考をアルゴリズム化しようとしたとも聞きますが、それを止めて、人間にはとうていできない一秒間に数億手(あるいはそれ以上)の手を計算するという方法を取り始めてから、人間のチェスチャンピョンに勝つようになりました。

自動機械翻訳でも同じようなブレイクスルーが生じているのかもしれません。





■ これからの英語教育こそが面白い

このような話をすると、すぐに「英語教育はもう要らない」とか「英語教師はみんな失職だ」と結論する人がいます。

たしかに今週には英会話学校の大手ジオスの倒産が報道されたりしました。旧来の英語教育がそのままの形でこれからも安泰であることなどはまずないでしょう。英語教育は大幅に変わらざるをえないでしょう。

だからこそ、これからの時代のための英語教育、外国語教育、言語教育を考えることはこの上もなく面白いことであると私は考えています。

ラッダイト運動を起こしたって無益なだけですから、新しい感覚と新しい思考の枠組みでこれからの言語コミュニケーション教育をデザインしてゆくことが私たちの仕事だと考えます。









【広告】 教育実践の改善には『リフレクティブな英語教育をめざして』を、言語コミュニケーションの理論的理解には『危機に立つ日本の英語教育』をぜひお読み下さい。ブログ記事とちがって、がんばって推敲してわかりやすく書きました(笑)。

【個人的主張】私は便利な次のサービスがもっと普及することを願っています。Questia, OpenOffice.org, Evernote, Chrome, Gmail, DropBox, NoEditor




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