2010年11月14日日曜日

桜井章一(2010)『努力しない生き方』集英社新書

私は「大学」という「近代合理主義」を教える制度の中で生き、「学校教育」という「人間を近代化」する装置で働く教師を養成する仕事に従事しています。こういった状況で私は「近代合理主義」や「人間を近代化」することを当然の前提としてみなし始めます。

しかし同時に「近代合理主義」の限界や暴走も理解し始めます。「人間を近代化」することの胡散臭さや影の部分も感じ始めます。かといって前-近代に戻るわけにも行きません。どうにかして近代社会に住みながら近代社会の歪みを解体することを目指そうとします。「教育」を問い直しつつ「教育」を行なおうと考えています。

そういった意味で、桜井先生のこの本などは、私などがもっている近代的な世界観を根源的に揺さぶります。しかも桜井先生の言葉は、言葉をもてあそんでの詭弁でなく、自らの身体に基づいた言葉であるだけに、説得力があります。

私はいつものように、いくつかの文章を引用してこの本を紹介しようとしましたが、どの文章も抜き出したら、とたんにそれが本来もつ力を損ねてしまうような気がしてきました。

ぜひこの本は(いやこの本も)ご自身でお読みください。その読書の流れの中で、あなたの頑なな心が少しでも解されたら、この本が持つ大きな力があなたを根源的に揺さぶるでしょう。


以下は目次です。この本を読まずに目次を見る方は、逆説的な小賢しさや、現場を知らない無責任な放言といった通俗的なイメージでこの目次の言葉を捉えるかもしれません。そのような方こそ、ぜひこの本をお読みください。

逆にこの本を既に読まれた方、あるいは読書体験の有無を問わず、ここで桜井先生が語られている生き方を体得されている方はこの目次の言葉を目にしただけで微笑まれ、なすべき仕事・日々の暮らしにまた戻ってゆかれるでしょう。

くどいようですがぜひお読みください。




目次


第一章 「努力しない」から、いい結果になる

努力しない―力が入ったら疑え
持たない―持つほどに不自由になる
得ない―「得る」ことは「失う」ことである
恨まない―上手な諦め方は生きる力を生む
壁を越えない―壁は上に乗るといい
頑張らない―頑張ると柔らかさを失う
悟らない―悟らぬうちが花
苦しまない―期待しなければ苦しくならない
隠さない―賢く見せるのは賢くない


第二章 「何もない」から、満たされる

満たさない―「何もない状態」は豊かである
才能を磨かない―「生きる」という才能があれば十分だ
休まない―仕事が休みになる
相手を読まない―分析したらそこでおわりになる
「絶対」を求めない―アバウトなほうが的を射る
格好をつけない―「 」をつけないことが、格好いい
覚えない―知識は足すより引いてみる
急がない―ゆったりすると物事を鋭くつかめる
正さない―部分だけ正すと元に戻る
意味を求めない―意味のないところに可能性がある


第三章 「求めない」から、上手くいく

求めない―求めると願いはかなわない
目標を前に置かない―目標は横に置くといい
わからない―「わからない」ことをわからないままにする
メジャーを求めない―マイナー感覚があれば自分を見失わない
前だけに進まない―行く手ばかりを見るのは危ない
自由を求めない―自由はルールの中にある。
土から離れない―地面から離れるほど本能は衰える
我慢しない―「我慢すれば報われる」は錯覚である
愛さない―愛は本来不純なものである
熱くならない―熱血はあてにならない


第四章 「つくらない」から、いいものが生まれる

つくらない―つくると嘘が入る
「裏のない人間」にならない―表だけで生きるとおかしくなる
軸を一つにしない―360度回転する軸を持て
尊敬しない―尊敬は学びの機会を奪う
よいことをしない―よいことにとらわれると悪を生む
他人事にしない―他人事は自分事である
否定しない―嫌なものも自分の中を通してみる
健康を求めない―過度な健康志向は病である
安全・安心を求めない―安全な社会は生きる力を弱くする
貫かない―多様性を生きるとキャパも広がる


第五章「計算しない」から、負けない

計算しない―計算しないほうが勝つ
テクニックに頼らない―テクニックだけだと行き詰まる
エネルギーを抑えない―出せば出すほど湧いてくる
見ない―聞くことで相手が見えてくる
運を求めない―運を意識する人に運はこない
立ち止まらない―「休む」も「動き」の一つ
集中しない―集中は丸く広げていく
育てない―「育てない」から上手くいく
刺激を求めない―文明の刺激は感覚をおかしくする





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