2011年4月4日月曜日

新入生への短い挨拶


知恵を出そう。汗を出そう。勇気を出そう。
子どもには希望を伝えよう。
そのために、大人は真実を語り合おう。





私が所属する講座は、本日新入生を迎えました。以下、私がした短い挨拶を、時間の関係で言えなかったことを補いながら再録します。これは今後の自分の自戒のためでもあります。




学部新入生へ


皆さん、広島から元気を出しましょう。

皆さんは3.11以降、どんな人に心打たれましたか?

私は何より、他人に何かを与える人です。苦しい時にこそ何かを与えられる人です。

人に何かを与えるには知恵と力が必要です。知恵と力を出すには、愛情と勇気が必要です。そしてこれからの日本は知恵と力、愛情と勇気がこれ以上に必要です。

どうか皆さん、大学の学びを通じて愛情にあふれ勇気ある人間になってください。そして知恵と力を出せる人間になってください。

私たち教員は、皆さんの学びを全力で支援します。一緒にしっかりと学びましょう。






大学院新入生へ



3.11以降、日本のさまざまな姿が顕になりました。私たちに関係深いところでいうなら私たちの言語コミュニケーションのあり方です。

首相官邸原子力安全・保安院東京電力による記者会見は国内外の人々の信頼に応えるものだったのか。さらにそれを日本のマスメディアはどう報道したのか。そこに見識はあったのか。そのマスメディア報道は海外のマスメディア報道―これにもさまざまな姿がありました―とどう異なったのか。あるいは一気に注目度が上がった上杉隆氏などの国内フリーランスジャーナリストの伝えることどう異なったのか。

それに対して(日本気象学会理事長から東京大学早野龍五教授までも含めた)研究者はどう応えたか。

あるいは日本の市民はツイッターやブログといった「小さなメディア」でどうコミュニケーションをしたのか。はたして本当に「静かな革命」は起こっているのか。それとも市民とは単なる衆愚に過ぎないのか。一色靖さんがいうところの「情報耐性」をもっていたのか。それともやはり信じたいことだけをますます信じ、信じたくないことはますます拒絶しただけだったのか。
さらに首相官邸外務省宮内庁、あるいは在アメリカ合衆国日本国大使館などを始めとした日本国大使館などは、きちんと英語を始めとした外国語で、日本からの感謝の意を尽くし、放射能被害や経済の立て直しなどについて説明を果たしているのか。そこに信頼できる人格は現れたのか。

または東京外国語多言語災害情報支援サイトのように、国内に住む、日本語を第一言語としていない住民について私たちは十分にコミュニケーションをとっているのか。

そもそも私たちはそれぞれの職場や家庭で十分にこの国難について適切にコミュニケーションをとっているのか。

私たちのコミュニケーションは、現実世界の苦難を克服するのに十分なものであったのか、そしてこれからありえるのか・・・

これは正解や満点などの存在しない問いです。一方で日本はこれだけの災害にもかかわらず社会の機能を保っているから十分であると答えることもできるでしょう。しかし私たちのコミュニケーションが改善の余地のないものであるかといえば、それは断じて否です。

大学院で皆さんはそれぞれのテーマを研究しますが、それぞれのテーマも深いところでは社会につながっていますし、つながっていなければなりません。

この広島の地は被災地につながっています。また、放射能や経済の問題が明らかに示すように、日本社会は国境・言語圏を越えて国際社会・世界と密接なつながりをもっています。「私たち」という領域の確定しない複数的存在こそが日本であり、世界です。

私たちのコミュニケーションが十分でなかったとすれば、それはなぜなのか。どこなのか。それは改善できるものなのか。ならばどのようにして・・・

私たちの研究は大風呂敷を広げたものではあってはいけませんが、他方で深いところで社会・世界につながるものでありたいと思います。

皆さんが大学院でしっかり学び、世界に貢献する力が持てるよう、私たち教員はしっかりと教育的に支援し、また自らも研究してゆきます。お互い深く広く学びましょう。









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