2012年9月20日木曜日

量的研究法に関する良書2冊



これまた随分前にご恵贈いただきながら、「いずれ読んでから」と思い、御礼のメール一通も出さないままでいた本です(ちょっと、この社会的常識のなさは、どうかしなければいけない)。本をお贈りいただいた先生にお詫びと(あまりに遅くなった)御礼を申し上げます。










『外国語教育研究ハンドブック』に関しては、「英語教育図書―今年の収穫・厳選12冊(2012年度)」で紹介させていただいたので、ここでの評は控えます。量的研究を志向する人にはとてもわかりやすいガイドになっています。「12冊」の一冊としたことから、私がこの本をお薦めする気持ちは忖度していただけることと思います。


『教育・心理系研究のための データ分析入門』は、とても丁寧に作られた本です。タイトルだけからすると英語教育研究には直結していないようにも思えますが、それは誤解で、編著者の平井明代先生が英語教育研究をご専門にされていること(また私がお名前を知っている優秀な英語教育研究者も執筆されていること)もあり、英語教育を研究しようとする者にとって親しみやすい内容となっています。

カバーをみると「SPSS活用法」とありますから、単なるハウツー本かと思うかもしれませんが、それも誤解で、内容記述が噛み砕いた上で掘り下げたものですから、大変啓発的です。

本書の目次は、以下で知ることができますが、一見してわかるように、構造方程式モデリングやメタ分析までカバーし、かつ、最近はやりの(笑)効果量まで解説してあります。




それでは基礎概念は適当に扱われているかというと、さにあらず、例えば妥当性の定義についてはMessickの論を丁寧に解説したりと、非常に良心的です。

SPSSを利用できる環境にあり、かつ、統計についてきちんと勉強しておきたいと思うのでしたら、大変にいいガイドではないでしょうか。



ただ、統計というのは、最初のうちはずいぶん敷居が高く感じられるものです。私の場合は、大学院生時代に必要に駆られて、最初に多変量解析から理解しようなどとしましたが、これは結局壮大な回り道でした。結局曲がりなりにも統計がわかり始めたのは、高校数学(数学Iや確率統計)の参考書を買い直して、それらを読み、さらに大村平のロングセラーを読んでからでした。(やっぱり数学は基礎積み上げ型の勉強なのね。でもこの高校数学の復習ではじめて数学が面白いことがわかった。高校時代にはなんとも思わなかった虚数や行列や代数幾何に感動すらしました ―定年になったら(いや、今でも時間さえあったら)数学は自分自身の喜びのために勉強したいです)。









もうちょっと新しい本だと(といっても1998年刊)以下が面白かったしわかりやすかったです。




と、本を紹介しましたが、私自身は現在、自分の研究の中で数量的なアプローチを取ることはほとんどありません。昔、心理言語学(の真似事)をしていた時の知識と、学生指導上必要になる知識をなんとかもっているだけです。上以外にもよい入門書は多々あると思います。読者の皆さんの中で、もし何かよい入門書 ―わかりやすい例などを通じて初心者にきちんと考えさせ納得させる本― があれば教えてください。


時間があれば、Khan Academyで、英語と共に勉強したいところですが、残念ながら日々の用事に追われています。勉強に専念できる立場にある学生さんが、心底うらやましい。(まあ、でもこれは定年後の楽しみということで)。






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