2016年7月23日土曜日

8/27(土)広島市で文科省主任大学改革官を招いての公開セミナー「大学入試改革のゆくえ ― これからの高等学校教育が目指すもの」


この度、広島大学大学院 教育学研究科では、高等学校教員を対象に「大学入試改革のゆくえ ― これからの高等学校教育が目指すもの」について指導力向上セミナーを開催します。



大学入試改革の方向性はとても気になる話題かと思います。
お誘いあわせの上、ぜひご参加下さい。


              
大学入試改革のゆくえ
これからの高等学校教育が目指すもの

日時
2016 (平成28)年8月27日(土) 10時~15時50分

場所
広島国際会議場 国際会議場ホール「ヒマワリ」(広島県広島市中区中島町1−5)

講演1
文部科学省 高大接続改革PT
主任大学改革官 濱口 太久未 氏

講演2
広島大学入学センター
センター長 杉原 敏彦 氏

講演3
広島県立広島高等学校 進路指導主事
教諭 森 嘉治 氏

講演4
早稲田大学
教授 菊地 栄治 氏

ご参加には申込が必要です。
下の広島大学教育学研究科ホームページからお申し込みください。









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広大教英が開催する
7/31(日)の無料公開ワークショップにもぜひお越しください!







2016年7月13日水曜日

『言葉で広がる知性と感性の世界 ――英語・英語教育の新地平を探る――』


遅ればせながら『言葉で広がる知性と感性の世界 ――英語・英語教育の新地平を探る――』が渓水社より発刊されたことをお知らせ申し上げます。

この本はもともと、中尾佳行先生が今年の3月末に定年退職されることを記念して、中尾先生を敬愛する研究者が中心となって執筆し私家版として刊行された本ですが、中尾先生が「これだけの成果を世に問わないのは忍びない」と出版を決意されて世に出た書籍です。



言葉で広がる知性と感性の世界 ――英語・英語教育の新地平を探る――
(渓水社ホームページの情報)
http://www.keisui.co.jp/cgi/isbn.php?isbn=ISBN978-4-86327-345-0



この本の方向性は、「まえがき」に示されているかとも思います。出版社の許可を得たので、「まえがき」を転載します。

 英語を学ぶことの重要性は、世間での流行り言葉が「国際化」から「グローバル化」へと変わるにつれますます強調されているが、それに応じて「英語を学ぶ」ことに関する省察は深まっているようには思いがたい。世間では今でも、「ネイティブから学ぶ」や「留学をする」といった方法が「英語を学ぶ」ことのほぼすべて、あるいは決定的な切り札であるかのような言説が見られる。いや、教育の専門家の間でも、「とにかく授業を英語で行えばよい」や「TOEICやTOEFLで学習成果を測定管理しなければならない」といった方法に関するやや単純な語り方がなされることすらある。

日本の学校教育では、周知のように英語が熱心に教えられているが、そもそも「英語を教える」ことに対する省察も、必ずしも十分ではないのではないかもしれない。少なからずの教師が、「英語は便利」や「グローバル化で英語は必須」といった一種の外的動機づけの言説とともに児童・生徒・学生に英語を教えている。だが、その結果は必ずしもかんばしくないことも(きわめて残念ながら)否定はできない。

学習や教育について、方法や外的動機づけについてだけしか語らないことには明らかな限界がある。

偉大なる哲学者であり教育学者でもあったジョン・デューイは、具体的な教育内容を考慮しない教育方法論を批判していた。言い切ってしまうなら、教育方法とは、一人ひとりの学習者の興味・関心にしたがって、どのように教育内容を選択し編集し配列するかだからだ (『民主主義と教育』)。

ここに英語教育内容学の重要性がある。

英語教育の方法を考える際には、学習者にとって英語教育内容がどのようなものとして見えるのかという観点が必須であり、その観点から教育内容を選択・編集・配列しなければならない。この意味で、英語教育方法学は英語教育内容学抜きには考えられない。

同時に英語教育内容学は、従来の英語学研究や英米文学研究を単純に水で薄めたもの ― 簡略化したもの ― ではない。英語学や英米文学の研究が、いわば普遍的な研究者目線からの探究であるとしたら、英語教育内容学は、特定の文脈での学習者目線によるものでなくてはならない。例えば、日本人英語学習者は、必然的に日本語の影響下にある。日本人英語学習者は、英語を ― 私たちの恩師である中尾佳行先生 (「あとがき」で詳述)がよく引用される鶴見俊輔の表現を使うなら ― 日本語の習慣を「学びほぐす」 (unlearn) 必要がある。日本人学習者を対象とする英語教育内容学は、そういった学びほぐしも視野に入れたものでなくてはならない。また、学習者の興味・関心に即して教育内容を選択・編集・配列する以上、英語教育内容学には、提示や活動をどのようにすれば学習者を惹きつけることができるのかという考慮が必要となる。この意味で、英語教育内容学は英語教育方法学抜きには考えられない。

そのように考える中尾先生は、英語教育内容学は「英語」を起点とし「言語」を中核とするものの、それだけには決してとどまらないとよくおっしゃっていた。英語教育内容学はもっと学際的に、教育学、心理学、神経科学、哲学、歴史学、さらにグローバリゼーションに関わる社会学や人文学一般などの考え方を取り込む必要がある。加えて技術的には例えばコーパス言語学のように計算機科学の知見も応用しなければならない。英語教育内容学はそのように発展しなければならないし、実際にそのようになりつつあるというのが中尾先生の見解であった。

教育が「人間を育てる」営みだとしたら、教師を育てる教員養成は「人間を育てる人間を育てる」営みである。そうなると、英語教育ひいては言語教育においては、言語がコミュニケーションのツールであると同時に、それを超えて人間の思考や感性を形成する基盤でもあることを踏まえておかないといけない、とも中尾先生はしばしばおっしゃっていた。

本書は、そういった中尾先生のお考えに啓発された人間が英語そして英語教育について考えなおし、それらを考える新地平を探求した論考を集めたものである。そこには上記のような意味の英語教育内容学の研究もあれば、英語教育方法学的な研究もある。伝統的な英語学や英米文学の流儀での研究もある。しかし一貫しているのは、言葉が私たちの知性と感性を広げるものであるということを、人文学的な研究者として訴えかけたい思いである。この本で、人文学的「知」からの問いかけを楽しんでいただけたら幸いである。





執筆論文および執筆者は以下の通りです。



コーパス言語学の言語理論への貢献
 :semantic prosody及びphraseologyをめぐって………石井達也

メディア・リテラシーを育てる英語教育のために
 ―新聞記事を批判的に読むための試案―………石原知英

The Tale of Melibeeouenについて………大野英志

O. Henry作“After Twenty Years”の語り手と焦点化
 ―英語教育における文学の可能性を求めて―………小野 章・中尾佳行・柿元麻理恵

文学テクストを会話分析の観点から指導する………菊池繁夫

空間表現に基づく身体を通した文学的な読み………熊田岐子

A Computer-Assisted Textual Comparison among the Manuscripts and the Editions of The Canterbury Tales:
 With Special Reference to Caxton’s Editions………Akiyuki Jimura・Yoshiyuki Nakao・Noriyuki Kawano・Kenichi Satoh

Determination of the Countability of English Nouns According to Generality of Concept………Toshiaki Takahashi

教師の実践共同体における言語教師認知変容プロセス記述の試み
 ―ある教職大学院生の事例―………中川 篤

ワーズワスの“The Solitary Reaper”の精読………中川 憲

日本人英語学習者による英語詩読解中の辞書使用………西原貴之

典型的な構文と動詞………能登原祥之

『パストン家書簡集』におけるsince………平山直樹

初期近代英語期における付加疑問文について………福元広二

Emmaにおける登場人物の内面を描く語彙:Mindを中心に………松谷 緑

Old Bailey Corpusによる後期近代英語研究………水野和穂

英語教師志望者の「英文和訳」と「翻訳」
―トリビアル・マシンとノントリビアル・マシン―………守田智裕

「訳」に関する概念分析………柳瀬陽介

英文法は「分ければ分かる」か?  語彙的アスペクトに基づく動詞分類を教える試み………山岡大基

「英語のプロソディ指導における3つの原則」の提案とその理論的基盤………大和知史

自己調整可能な書き手/直し手の育成を目指した英語ライティング指導………山西博之

プラニングに焦点を当てた英語パラグラフ・ライティングの指導
 ―プロダクトとアンケートの結果について―………吉留文男

Teachers’Responses to the Implementation of the Task-Based Language Teaching (TBLT) in Junior High Schools in China………Jing Wang・Jun Mao

コミュニケーションの「ツール」を超えて
 ―人文学的「知」からの問いかけ―………中尾佳行


諸般の事情で私が筆頭編者になっておりますが、実質的な編集作業のほとんどは西原貴之先生にやっていただきました。またこの論文集を出版市場に出すことができたのは中尾先生の篤志によってのことです。こういった意味で、私はまったく筆頭編者の名に値しないのですが、ここで紹介させていただきます。







なお、7/31(日)の広島大学英語文化教育学会では、この書籍を(これも中尾先生のご厚意で)約2割引きの4000円で頒布します。

この学会には中尾先生ご自身もいらっしゃいますし、午後には公開ワークショップや入試相談会も開かれますので、7/31はどうぞ広島大学東広島キャンパスへお越しください。



2016年7月12日火曜日

「子どもの学習意欲を高めるための実践研究とは」(ある教育センターでの講演スライド)



先日ある公立の教育センターで、小学校や中学校でさまざまな教科を教える中核教員のための研修で講演をさせていただきました。ここではその時のスライドとレジメを掲載しておきます。

中核教員と一口に言っても、「先生の授業が楽しくてたまらない」と言われる先生から、教育困難校に配属され一口では語れない苦労をしていらっしゃる先生まで、さまざまな先生方がいらっしゃいます。そういった現場の先生方に安直なことばは届きません。こういった講演そしてその合間での語り合いは、私にとっては鍛錬と学習の機会でもあります。


語りながら、私は自分の話が二つの基盤から成り立っていることを再認識しました。

一つは、私が観察させていただいた数多くの熟練教師の方々の言動です。私はそういった先生方を観察することによって、教育に関する基盤を築くことができました。

しかしその基盤は、存外に言語化や体系化することが難しいものです。そこで新しい言語表現を求めて私は哲学や社会学や神経科学などなどの文献を読んでゆきました。それが私のもう一つの基盤です。

私は教育現場の観察から得られた問題意識を元に、各種の学術文献を読み進めています。現場の知恵を明確に整合的に語りたいという想いがあるから、少々難解と思われる文献も読み進める気になります。ですから私には二つの基盤があるといっても、現場観察がより根底的な基盤ということになります。


ある漫画の台詞ですが(苦笑)、「よく見て、よく考えなさい」ということばがありました。今でも記憶に残っていることばです。私の場合は、教育現場をよく見て、各種の学術文献を通じてその見たことをよく考えるようにしていると言えるのかもしれません。

そしてその結果、他の現場の先生方にも届き通じる表現方法を模索しています。そういった表現で、さまざまな実践の様子が伝わるだけでなく、話を聞いた先生方もそれぞれご自身の実践を理解し記述することができると信じているからです。

もちろん私の歩みは遅々としたもので、まともな研究者にとっては噴飯物でしょうが、現在の私にとってはこれができる最善のことなので、しばらくはこういった努力を重ねてゆきたいと思います。


今回のスライドは「子どもの学習意欲を高めるための実践研究とは」です。これは依頼主の教育センターから与えられたタイトルですが、このことにより私は「意欲」や「意識」や「意味」などの表現に共有されている「意」について考え、自分なりの(俗流)解釈を提示してみました。

ご興味のある方はダウンロードして御覧ください。













2016年7月11日月曜日

7/31(日)はぜひ広大教英(東広島キャンパス)へお越しください: 学会+公開ワークショップ+入試相談会

7/31(日)に広大教英は、以下の三つの行事を行います。


(1) 広島大学英語文化教育学会

(2) 公開ワークショップ:大学受験生がかかえる英語学習の悩み
 - 予備校教師からの話題提供にもとづく対話の集い

(3) 広大教英入試相談会


午前中の(1)は広島大学英語文化教育学会員限定ですが、午後の(2)と(3)はどなたでもご自由に参加できます。以下に概要を書きますので、どうぞふるってご参加ください。





(1) 広島大学英語文化教育学会




(クリックでチラシが拡大します)

広大教英の卒業生・修了生の学会です。同窓生ならではの親密な空間で、英語教育についての本音を語り合いましょう。

今年は、恒例の卒業生・修了生による実践研究発表に加えて、公開ワークショップも行います(下記参照)。また、学会終了後に簡単な懇親会も開催しますのでそこで旧交を温めたり、先輩後輩間で新たな出会いを得ることもできます。

ぜひご参加ください(懇親会(有料)のみ事前申込が必要です)


■ 場所:広島大学教育学部K104教室

■ スケジュール:
10:00-10:30  受付開始
10:30-10:40  開会行事
10:40-12:00  実践研究発表
12:00-13:30  昼食休憩(理事会)
13:30-13:50  総会
14:00-15:50  公開ワークショップ(K102教室で開催)
15:50-16:00  閉会行事
16:30-    簡単な懇親会(有料・事前申込をお願いします)
※懇親会の申込は yosuke@hiroshima-u.ac.jpへ

■ 実践発表:

藤本裕佳里先生(三次市立十日市中学校教諭)
「グラフィックオーガナイザーを用いた『書くこと』の指導
―主体的な学びの実現を目指して―」

二川敬伍先生(広島県立三原高等学校教諭)
「アクティブ・ラーニングを目指す英語授業改善への取り組み
―教員・生徒の長期的な意識改革から―」

■ 公開ワークショップ(下の(2)を御覧ください)

■ 懇親会
大学内あるいは大学の近くで簡単な懇親会を16:30から開催します。会費は安く抑える予定です(3000円以内)。会場予約のため参加ご希望の方は必ず yosuke@hiroshima-u.ac.jp まで事前にお申し込みください。






(2) 公開ワークショップ:
大学受験生がかかえる英語学習の悩み 
- 予備校教師からの話題提供にもとづく対話の集い -




(クリックでチラシが拡大します)


河合塾の人気講師である河野健治先生をお招きし、予備校から見えてくる受験生の英語学習の悩みについて情報提供していただきます。

その後、そのお話を受けて、参加者同士で小グループで語り合います。さまざまな立場の参加者が自由に話し合うのはそれだけでも楽しいものです。高校や中学の英語教師、英語塾講師、英語教師志望の学生だけでなく、当事者である予備校生や高校生、その他一般市民も歓迎いたします。ぜひお気軽にご参加ください(事前申込は必要ありません)。


■ 場所:広島大学教育学部K102教室
交通アクセス
キャンパスマップ

■ スケジュール
14:00:開始:趣旨説明と講師の紹介
14:05:講師による話題提供と司会による時折の質問
15:00:小グループでの意見共有と対話(全参加者が小グループで)
15:20:全体での意見共有と対話(全参加者が会場全体で)
15:50:閉会行事
16:00:終了
※会場のK102には13:30ぐらいから入室できます。






(3) 広大教英入試相談会


(クリックでチラシが拡大します)


広大教英では意欲ある学生を求めています。上記の公開ワークショップが終了後、別会場で簡単な広大教英入試相談会を開催します。広大教英で何が学べるのか、受験対策はどうしたらいいのか、などじっくり聞くことができます。

広大全学としては8/18(木)と19(金)にオープンキャンパスを開催し、教英も説明会を開きますが、例年オープンキャンパスには多くの受験生が訪れ、個人的な相談があまりできない現状がありますので、今回の公開ワークショップの後に、教英独自の入試相談会を開催することとしました。

学部進学希望者、大学院進学希望者のどちらも歓迎ですので、ぜひお気軽にお越しください。

事前の申込は特に必要ありませんが、もし具体的な質問があれば事前に yosuke@hiroshima-u.ac.jp までお知らせください。当日までに資料を用意したり、当日に当該教員が直接お答えできるようにできるだけの準備をしておきます。

■ 場所:広島大学教育学部K104教室
交通アクセス
キャンパスマップ

■ スケジュール
16:00- 相談事項に応じて適宜対応します。


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7/31(日)を参加者の皆さんにとって有意義な一日にしたいと思っております。
7/31(日)は、ぜひ広島大学東広島キャンパスの広大教英行事へご参加ください!