2017年9月29日金曜日

マーティン・フォード著、松本剛史訳 (2015) 『ロボットの脅威  人の仕事がなくなる日』 日本経済新聞出版社



以下の記事は、学部一年生のための授業(「英語教師のためのコンピュータ入門」)のために作成したものです。

ここではこの本の論点のうち、皆さんにとって重要だと考えたものを列挙しました。
Q は皆さんに考えてほしい問い、※は皆さんに参照してもらいたいサイトを示しています。

これから予期される激動の時代に、皆さんよりも若い世代(わが子や担当する児童・生徒・学生)に対して賢慮ある指針を示せるように、今のうちに、しっかりと情報を集めて分析的に思考する訓練を積んでおいてください。


序章

■ 1973-2013年にかけて、一般の製造業や非管理職の労働者の所得は13%減少。しかし、生産性は107%上昇 (Kindle の位置No.117-119)

■ 人工知能は、ルーティンな仕事だけではなく、予測可能なすべて仕事にとって代わるかもしれない。 (Kindle の位置No.190)

■ 現在、全世帯の上位5%が支出全体の40%を占めているが、今後もこの高所得層への集中は進むだろう。(Kindle の位置No.229)

Q もしこの傾向が今後も続くとしたら、教師はどのような態度で教育に臨めばいいのだろうか?


第一章 自動化の波

■ インダストリアル・パーセプション社 (Industrial Perception) の機械は、周囲の環境と相互作用しながら不確定性に対処する点で、人間並みの能力に近づいている。(Kindle の位置No.324)
※ YouTube: Industrial Perception, mixed case handling
https://www.youtube.com/watch?v=Nn-gB6SaV8U

■ リシンク・ロボティックス社 (Rethink Robotics) のバクスターは、必要とされる動きのとおりにアームを動かすだけで訓練することができ、プログラミングが不要。USBでその動きを別のロボットに伝えることができる。(Kindle の位置No.334)
※ YouTube: How Baxter Robot Works
https://www.youtube.com/watch?v=gXOkWuSCkRI

■ ROS (Robot Operating System) は無料のオープンソースで、ロボティックス開発での標準的なソフトウェアプラットフォームとなりつつある。 (Kindle の位置No.351)
※ ROS
http://www.ros.org/
※ オープンソース
http://www.weblio.jp/content/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B9
※ プラットフォーム
http://www.weblio.jp/content/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%A0

■ 経済先進国での大規模な断絶的破壊 (disruption) は、サービス部門で起こると見られている。(Kindle の位置No.464)

※ Momentum Machines社はホームページで次のように述べている。
Our first device makes gourmet burgers from scratch with no human interaction. These burgers are fresh-ground and grilled to order and accented by an infinitely personalizable variety of produce, seasonings, and sauces. Serving a burger this great at such affordable prices would be impossible without culinary automation.
http://momentummachines.com/

■ ロボット革命で重要な役割を果たすと考えられるのが「クラウドロボティックス」である。 (Kindle の位置No.639)
※ もうどうにも止まらない! 人工知能の超進化を促す「クラウドロボティクス」とは?
https://time-space.kddi.com/ict-keywords/kaisetsu/20160719/

Q 今後のキャリア教育はどうあるべきだろうか。また、英語教育はキャリア教育のためにどんな貢献ができるだろうか? 


第二章 今度は違う?

■ テクノロジーが進展する20世紀後半以来の経済的傾向の7つの特徴:(1)停滞する賃金、(2)労働分配率の低下と企業収益の増大、(3)労働力率の低下、(4)雇用創出の減少・雇用なき景気回復の長期化・長期失業率の増大、(5)格差の拡大、(6)大卒者の所得低下および失業、(7)分極化とパートタイム職。
(Kindle の位置No.848-1087)
※ 労働分配率とは何か
http://www.first-kessan.com/category/1329922.html
※ 労働力率
http://www.weblio.jp/content/%E5%8A%B4%E5%83%8D%E5%8A%9B%E7%8E%87
※ コンピューター化で雇用が二極化、中間スキル層が犠牲に=米調査
http://jp.reuters.com/article/computer-job-paper-idJPKBN0GP09S20140825

※ 過度な悲観論にも楽観論にも陥らない思考を学ぶためにも、以下のTED動画はぜひ見てほしい。

TED: Will automation take away all our jobs?
 


Q 皆さんは一般教養で学んでいる経済学や歴史学を「無用の長物」と考えていないだろうか?「私はとにかくいい英語教師になりたいのだから、英語しか勉強したくない」という態度は、将来、どのような英語教師を生み出すだろうか?


第三章 情報テクノロジー

■ 人間の脳の処理速度は、ねずみの脳の処理速度とほとんど変わらず、それは先端的なICの数千倍から数百万倍も遅い。人間の脳の優秀さはそのデザインの優秀さからきている。もし機械が脳の複雑なデザインを実現したらどうなるのだろう。 (Kindle の位置No.1424).
※ 技術的特異点
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%80%E8%A1%93%E7%9A%84%E7%89%B9%E7%95%B0%E7%82%B9

■ これまでのテクノロジーと比較して、ITには機械知能を組織全体に広めて労働者に取って代わる力と、「勝者ひとり占め」を生み出す傾向がある。(Kindle の位置No.1570)

Q 皆さんの身の回りに「勝者ひとり占め」はないだろうか?


第四章 ホワイトカラーに迫る危機

■ ナラティブ・サイエンス社のテクノロジー(クイル Quill)は、すでにさまざまなメディアに使用され、自動化された記事を生み出している。 (Kindle の位置No.1624)
※ Narrative Science
https://narrativescience.com/
※ 人工知能を備えたロボットが、人間から「専門的な仕事」まで奪いつつあるという話
https://news.careerconnection.jp/?p=18588

■ グーグルの翻訳システムは、まだ熟練の翻訳者の水準には達していないが、500を超える言語の中から二つを組み合わせて双方向の翻訳ができる。これは秩序破壊的な進歩ではないだろうか。(Kindle の位置No.1737)

■ IBMのワトソンに関するプロジェクトでは、"Watson Paths"で、医学生に病気の診断を教えるだけでなく、その診断をする際に用いた情報と論理と推論を示して、医学生に診断技法の訓練をしている。
※ Watsonとは
https://www.ibm.com/watson/jp-ja/what-is-watson.html
※ IBM Research Unveils Two New Watson Related Projects from Cleveland Clinic Collaboration
https://www-03.ibm.com/press/us/en/pressrelease/42203.wss

■ 従来、コンピュータはプログラムされたことしかしないと言われていたが、現在、機械学習のアルゴリズムは定期的にデータを調べて統計的な関係を明らかにしたり、自らプログラムも書くことができる。さらに、機械は好奇心や創造性まで示しはじめている。(Kindle の位置No.2077)
※ アルゴリズム
https://kotobank.jp/word/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B4%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0-532
※ プログラミングの勉強に欠かせないアルゴリズムとは?アルゴリズムの種類
https://www.internetacademy.jp/it/type-of-programming-algorithm.html

■ あるプログラムは、ニュートンの第二法則も含む多くの物理法則を自力で導き出した。(Kindle の位置No.2093)
※ 「物理法則を自力で発見」した人工知能 
https://wired.jp/2009/04/15/%E3%80%8C%E7%89%A9%E7%90%86%E6%B3%95%E5%89%87%E3%82%92%E8%87%AA%E5%8A%9B%E3%81%A7%E7%99%BA%E8%A6%8B%E3%80%8D%E3%81%97%E3%81%9F%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%9F%A5%E8%83%BD/
※ Computer program self-discovers laws of physics
https://www.wired.com/2009/04/newtonai

■ すでに機械が音楽を作曲することに関しては企業化がされている。 (Kindle の位置No.2153)
※ Melomics
http://melomics.com/
※  YouTube: Melomics Media
https://www.youtube.com/channel/UCiXwgm5-h9UW2BbeLQQ_wmA

■ オフショアリングは、自由貿易の一つの形態として考えるよりは、バーチャルな移民と考えた方がいいのではないか。(Kindle の位置No.2240) たとえ国内雇用を守るために国境に壁を作ったとしても、この「移民」を止めることはできない。
※ オフショアリング 
http://www.itmedia.co.jp/im/articles/0606/20/news124.html

■ だが、いまオフショアの労働者がしているルーティン作業はやがて機械に取って代わられるだろう。(Kindle の位置No.2278-2279)

Q 機械翻訳が実用化された時、学校の英語教育はどのような価値をもつのだろうか?そもそもそれは必要とされるのだろうか(されるとしたらどういう点で?)


第五章 様変わりする高等教育

■ ある研究は、作文の機械による採点は、人間の専門家にまさるとも劣らないことを報告している。(Kindle の位置No.6106-6107)
※ University of Akron News Release: “Man and Machine: Better Writers, Better Grades,” April 12, 2012,
http://www.uakron.edu/im/online-newsroom/news_details.dot?newsId=40920394-9e62-415d-b038-15fe2e72a677
この記事で、ある研究者は次のように言っている。"automatic grading doesn’t do well on very creative kinds of writing, such as haiku," he said. "But this technology works well for about 95 percent of all the writing that's out there, and it will provide unlimited feedback to how you can improve what you have generated, 24 hours a day, seven days a week."

■ ムーク (Massive Online Open Courses: MOOCs) に関するある研究は、ユーザーの多くが講座が開始されて、一、二週間で脱落し、最後まで受講するユーザーはほとんどいないことを明らかにした。 (Kindle の位置No.2558) だが、やる気のある学生にはムークは素晴らしい機会を与えてくれる。
関連記事:MOOC(大規模公開オンライン講義)による英語文化圏の巨大な力に、他の言語文化圏は対抗できるのか?
http://yanaseyosuke.blogspot.jp/2013/09/mooc.html
※ Penn Graduate School of Education Press Release: “Penn GSE Study Shows MOOCs Have Relatively Few Active Users, with Only a Few Persisting to Course End,” December 5, 2013,
http://www.gse.upenn.edu/news/press-releases/penn-gse-study-shows-moocs-have-relatively-few-active-users-only-few-persisting-

※ 教師という仕事は機械に(全面的にあるいは部分的に)とって代わられるだろうか?人間でなければならない部分があるとしたらそれは何だろう?


第六章 医療という難問

■ 機械により医療の料金が下がれば、その恩恵は大きいだろう。(Kindle の位置No.3136-3137)
※ただ、業界は経済的利益がなければなかなか自らを破壊するような革新は行わないので、楽観視はできないのかもしれない。
参考:15歳の少年、膵臓がん発見の画期的方法を開発 たった5分、3セントで検査
http://www.huffingtonpost.jp/2013/11/10/cancer-test_n_4252707.html


第七章 テクノロジーと未来の産業

■ 企業は、自己破壊的革新かこれまでのビジネスモデルかの選択を迫られた時、たいてい後者を選ぶ。(Kindle の位置No.3555)

Q 就活における「大手・有名志向」のリスクについて考えよう。


第八章 消費者、成長の限界・・・そして危機?

■ 大金持ちは高級車をひょっとしたら10台ぐらい買うかもしれない。だが、何千台もの車を買うことはないだろう。同じことは他の商品やサービスについてもいえる。マスマーケットでは消費者に購買力が配分されることがきわめて重要である。(Kindle の位置No.3685)

■ しかしエコノミストのあいだでは、所得格差が経済成長の大きな妨げになっているという一般的合意はまだできていない。 (Kindle の位置No.3773)

■ エコノミストの考え方については、ジョン・メイナード・ケインズがほぼ80年前に『雇用、利子、および花柄の一般理論』の第21章で言ったことが正しいのかもしれない。(Kindle の位置No.3820)

"Too large a proportion of recent 'mathematical' economics are merely concoctions, as imprecise as the initial assumptions they rest on, which allow the author to lose sight of the complexities and interdependencies of the real world in a maze of pretentious and unhelpful symbols. "
http://gutenberg.net.au/ebooks03/0300071h/chap21.html

「最近の「数学的」経済学のあまりに多くは、たんなる寄せ集めであり、それらの最初の前提と同様に不正確なものである。経済学者は、見栄えはよいが役に立たない記号の迷宮に入り込み、現実世界の複合性と相互依存性を見失っている」(拙訳)

※ ジョン・メイナード・ケインズ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BA

■ 将来は支配的な富裕階層 (plutocracy) が、塀で囲まれた地区に閉じこもり、その周囲をロボットが警護するようになるかもしれない。これは中世の再現のように思われるかもしれないが、一つ違うのは、中世の農奴の労働力は必要だったのに対して、未来の労働者の労働力は、機械によってほとんど必要のないものとなっていることだ。(Kindle の位置No.4055)

Q ケインズの言っていることは理解できるだろうか?(この本は、経済学者向けではなく、一般読者のための読み物である。皆さんはきちんと本が読めるのだろうか?)


第九章 超知能とシンギュラリティ

■ 著者は、シンギュラリティの実現可能性をきわめて低いものとみなしているが、もし(それが何世紀後のことであれ)実現したら、それは人類のあり方を大きく変えるだろう。 (Kindle の位置No.4587)


第十章 新たな経済パラダイムをめざして

■ 若い世代の教育と訓練に投資するという方法は、必要とされる(高度な)労働力がどんどんと少なくなっていくということを勘案していないのではないか。 (Kindle の位置No.4670)

■ 最低限所得保障(Basic Income) が必要となるのではないか。
※ 関連記事:井上智洋 (2016) 『人工知能と経済の未来』 (文春新書)
http://yanaseyosuke.blogspot.jp/2016/09/2016.html

■ 私たちの経済の労働集約性がどんどん低くなっていくとしたら、論理的にみて、課税計画の重点を労働報酬から資本の方へ移すべきということになる。 (Kindle の位置No.5120)
※ 労働集約型産業
https://kotobank.jp/word/%E5%8A%B4%E5%83%8D%E9%9B%86%E7%B4%84%E5%9E%8B%E7%94%A3%E6%A5%AD-179062

Q 資本をもちロボットを所有する富裕層への課税を増やし、国民全員に最低限所得保障をする政策は未来の日本で採択されるだろうか?現在の日本の世情や世論にはどのような特徴が見られるだろうか?


終章

■ テクノロジーの進歩を解決策としながらも、その社会的・経済的・政治的な意味合いを認識しながら適応していくことがこれからの行く道ではないか。 (Kindle の位置No.5225)

Q 全体を通じて皆さんは何を感じ何を考えただろうか。それは今日からの大学生活にどのような影響を与えるのだろうか?








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